本研究は、高い熱伝導物質の探索を目指し、様々な物質の熱伝導度の理論予測を可能とすべく、フォノン間相互作用の第一原理計算を確立することを目的としたものである。 平成13〜15年度の研究の結果、まず基本的フォノンの第一原理計算法を確立しプログラムコード化した。その段階のプログラムは非常に汎用性のあるものであるので「Osaka2002_nano」という名で一般公開し誰でも利用できるようにした。 さらにフォノン間相互作用の効果を見るため、構造の圧力依存性、熱膨張係数の評価を行えるようにした。そしてこれらから求まるフォノンの非調和効果から、フォノン寿命を求める手続きについてはモデル計算で良く実証してきており、ほぼ第一原理計算からの手続きもその経験に基づき実行できる見通しを付けた。しかし更なるフォノンの詳細、特にゾーン全体での分散を十分な解像度で行うための線形応答理論の利用に関してはまだ達成されていないことが今後の課題である。 一方、分子動力学シミュレーションにより原子位置や速度の時間相関関数より、輸送係数を評価する方法も第一原理計算で実行可能なレベルまで発展させてきた。但しこれに関しては時間、空間的スケールの点で十分な精度を持つものとはなっていないのが今後の課題である。 そしていくつかの興味ある物質に対してフォノン、及びフォノン間相互作用を計算し、フォノン寿命などの評価を行い、それらが第一原理計算で十分予測可能なものであることを実証してきた。
|