研究概要 |
実験で作製されている超格子系Ti/MgOについて密度汎関数法にもとづく第1原理電子構造計算手法を用いて理論的に電子的性質の計算を行い解明を進めた。なお、具体的なバンド計算法としては、共有結合的な原子間の電荷密度の記述も出来、現在最も効率的で信頼性のある手法の1つであるFLAPW法(フルポテンシャル線形化APW法)を用いた。 計算では、まず全エネルギー最小により実験のX線構造解析では確定していない界面での原子配置を含めた系全体の原子配置を定める。次にこの構造に対して電子構造、各バンドの性格、電荷分布、状態密度、フェルミ面の計算を行い、結合状態や界面での電荷移動などを含めこの系の電子構造の基本的な性格を明らかにした。 Ti/MgO超格子は面方向では金属的であるが、成長方向では金属層、絶縁体層に閉じ込められ量子化された離散的な状態が両層ともに存在している状態を形成している。この付近ではMgOのバンドギャップにTiのs, p軌道が入り込み電子が金属層に閉じ込められていることが分かった。Ti/MgO超格子のX線による発光、吸収スペクトルを計算した。結果は、量子閉じ込め効果による階段状のスペクトルを示す。 Ti/MgO超格子に対して、各バンドの位置関係、即ち、バンドダイヤグラムを電子構造に基づき求めた。MgOのバンドギャップに実験値を用いるこの伝導帯の底とMgOの伝導帯の底間のエネルギー差は、ΔEvc=8.90(eV)となった。 Ti/MgO金属/絶縁体超格子について、エッチングあり、なしで光電子分光(XPS)を測定した。測定結果は価電子帯の状態密度の理論的結果と良く一致しており、計算された電子構造の特徴が裏付けられた。関連研究として起格子など量子閉じ込め系混晶フォノン状態や第1原理電子状態計算による熱電物質の電子構造と特性解明の研究を進めた。
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