研究概要 |
界面の成長速度を決定するプロセスとして、環境相から界面へ分子の輸送(拡散)と界面で結晶相へ分子の取り込みがある。拡散律速と界面律速である。両方の過程がつながって分子が結晶へ組み込まれて行く。本研究では界面律速成長する実験系として氷結晶を用い,実験観測と簡単な数値計算を行った。取り扱いを単純化するために、曲面で囲まれた2次元結晶の成長を考え、界面局所曲率の効果が無視できる程度に大きいサイズ(>10μm)に着目する。これは私たちが研究してきた、高圧力下の水からプリズム面のラフニング温度(-16℃)以上で、ラフ方位に2次元成長する氷結晶を扱うことに相当する。 2次元氷結晶は曲面で囲まれているが、全体としては六方対称性を維持しながら、相似的に成長した。a軸方向の平均曲率の時間発展を初期曲率を変えて測定した。曲率は初期曲率によらず、時間とともに単調減少し一定値に漸近した。この傾向は界面幾何モデル理論とよく一致する。成長素過程を詳しくみるために、幾何モデルによるシミュレーションを行った。ラフ界面の成長速度として、弱い六方異方性をもつ関数形を与え、円形からスタートしたとき、形と曲率の時間発展を計算した。その結果、実験で得られた相似成長と局所曲率の時間発展をうまく再現することができた。本研究はラフ方位に2次元成長する氷結晶を用いて、界面律速成長(幾何)モデルの実験検証を行い、その妥当性を明らかにした。
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