研究概要 |
高圧力下にある氷Ih/水の平衡曲線(氷Ihの融解曲線)を精密に測定した結果、氷Ihの新しい結晶相を発見した。この研究の発端は1998年、温度をパラメータとして氷が成長も融解もしない、一定のサイズを保持する平衡圧力を観測したところ、得られた氷/水平衡曲線上に不連続点(約-160℃,1600 bar)が存在することを見出したことにある。すなわち、-16℃で小さな圧力ジャンプの存在、および全体が1本の滑らかな曲線というより不連続点を境に2本の曲線からなるらしいことが分かっていた。今年度再び、詳細な観測を行った結果、以下のことが明らかになった。 氷Ihの融解曲線は1本ではなく、約-8℃,900 barから分岐する多くの準平行な曲線群からなる。普通の氷Ihの融解曲線より融点の高い側に、新しい氷Ihの融解曲線群が存在する。現在までに見つけた最高融点の氷は、2000 barで3℃、3000 barでは6℃だけ普通の氷より高い値をもつ。この氷は、1000 barまでは普通の氷と同じ融点であるが、高圧力になるにつれ融けにくくなる。新しい氷Ihの構造と物性の研究は来年度の課題になるが、水分子の重心(酸素配置)ばかりでなく、配向(水素配置)まで秩序化した氷結晶ではないかと考えている。
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