研究概要 |
昨年度に引き続き、圧力制御による氷Ih/水の平衡曲線(氷Ihの融解曲線)の精密測定を行った。その結果、昨年示唆した、「氷Ihの融解曲線は1本ではなく、-8℃,900barから分岐する数多くの準平行な曲線群からなる」との結論は間違いであり、1本の滑らかな曲線であることがわかった。融解曲線上には不連続点(変曲点)は存在しない。融解圧力と温度の関係は3次関数できれいに表現できることを示した。 私たちが10年来取り組んできた「氷結晶の基底面は融点まで原子レベルで平らであるが、プリズム面はラフニング転移を起こし、荒れる」ことをより確かするために、同位体D_2OについてもH_2Oと同様な観測を行った。D_2O分子はH_2O分子より重いので、D_2O氷を融かすにはより大きな熱エネルギーを必要とするために、その融点は大気圧下で+3.8℃へずれることが知られている。圧力を加えたとき、D_2O氷の融解曲線はH_2Oのものを、約+4℃だけ平行移動した3次関数であること実験的に確かめた。プリズム面のラフニング点もH_2O氷の、-16℃(1600bar)より高い温度に出現することが対応原理から予想されるが、観測の結果、約-14℃(1800bar)と決定した。
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