本研究で着目してきたのは、界面の運動法則が界面自身の性質(形状や微視的構造)のみにより決定され、界面の外の部分(非局所拡散場)によらない「界面律速モデル」に従う結晶成長である。結晶に特有な界面構造の異方性のみが界面の運動を支配する場合には、界面の発展方程式は1階の線形微分方程式になり、その解は容易に得られる。界面の法線方向速度関数として、結晶成長の素過程を考慮した、さまざまな非等方関数形を与えると、多様な成長・融解パターン解が得られる。界面律速モデルは実験的には、熱平衡に近いところでゆっくり成長する場合、および速い成長でも周囲の拡散場が有効になる前の成長初期段階に適用できる。 本研究では、2次元的に成長および融解する氷とCC14を用いて実験観測を行い、得たデータを界面律速モデルで解析し、パターン形成について以下のことを明らかにした。 (1)ファセットと曲面が共存する滑らかな初期結晶は、小さい駆動力でゆっくりと成長を始めると、成長直後にファセット端に曲率の不連続点Shockが発生する。成長とともに曲面の平均曲率は減少する。 (2)氷の融解形は成長形とは非対称に発達する。ラフニング温度以上では、曲面の曲率発展が融解と成長では増減が逆になる。ラフニング温度以下では、成長形は6角板になるが、これを融解させると6つの角から融け始め、12角形の過渡形を経て、30°回転した6角形を示す。
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