今年度はまずこの系における強い電子相関効果をより正確に扱うため密度行列繰り込み群法(DMRG法)のプログラム開発を行った。特に本問題においては金属混合に基づくランダムネスの問題があるが、空間に固定したブロツク作成の手続きにより実用に耐えられるほど十分正確に計算が行えることが分かった。次にこの計算方法を実際に適用し、各種金属混合比の場合における格子変位や電荷密度の計算を統計平均も含めて行った。得られた結果は現在詳しく解析中であるが、少なくとも平均場近似のそれよりはよりモット絶縁体優勢であるように見え、これはモット絶縁体がスピン揺らぎにより安定化されることを考慮するともっともな結果と言える。またこの方法の優れた点としてスピン状態を正確に記述出来るのだが、それにより等しく3価になったPdとNiもスピンモーメントの期待値においては有意な差があり見分けがつくことが分かった。また、Niイオンは混合状態でも純粋状態でも3価であり状態として変化しないように思われるが、スピン状態に着目するとやはり有意な変化がある。これは軟X線発光によって測定可と思われ現在実験を依頼中である。 今年度は研究計画にはなかったことだが実験研究の進展にともない新たな取り組みも行った。最近混晶系の吸収スペクトルが詳しく測定され、特にNi濃度が希薄な領域におけるスペクトルが興味深いことが分かった。この領域はPd優勢ではあるがモット状態であることも確かめられており、すなわち準安定状態ではあるが初めてPdモット状態のスペクトルが得られたことになる。そこで本研究ではこれら3状態、すなわち、モット状態(NiおよびPd)とCDW(電荷密度波)状態(Pd)をそれぞれの光学ギャップを再現するようにパラメターを調節しながら一つのモデル(dpモデル)で統一的に記述した
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