擬1次元ハロゲン架橋Pd/Ni錯体の混晶比を変えながら、その基底状態・励起状態の物性の変化を理論的に調べた。その結果、以下の知見を得た。 1.ハロゲン格子変位・電荷不均一性を混晶比を連続的に変えながら求めたところ、その曲線はほぼラマン散乱強度の振る舞いと一致した。すなわち、本モデル(拡張パイエルス・ハバードモデル)はこの系を全ての混晶比に渡って十分良く説明する。 2.平均場近似の代わりにDMRG法を用いて電子相関を十分正確に考慮した。その結果、CDW・モット絶縁体相変化の付近で特に大きな差異、すなわち電子相関効果を得た。特に、平均場近似では比較的なだらかな相変化が、DMRG法の結果ではより転移らしく見える。このことはIR測定において見出された比較的はっきりした価数の変化と整合する結果である。 3.光励起が分離した電子正孔を生じると仮定してキャリア誘起効果も考察した。その結果、以下のような振る舞いを金属配置のランダムネスに対する統計平均の結果得た。 1)CDWドメインがモット絶縁体ドメインより優勢な場合:キャリアは前者から後者への変化を誘起する。2)モット絶縁体ドメインがCDWドメインより優勢な場合:キャリアは前者から後者への変化を誘起する。特に、モット絶縁体に相変化しきった混晶比において誘起効果(CDWドメイン生成)は最も大きい。これによると、一対の電子正孔が約20サイトのドメインを形成する。
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