本研究計画の目標は、1)近接場光学顕微鏡技術と極短パルスレーザ光技術を融合し空間的・時間的に集中した極限光子場を作り出す、2)それによって引き起こされる非線形光学効果(第二高調波発生・2光子蛍光など)を利用した新しい非線形近接場光学顕微鏡を開発する。3)この新しい手法を積極的に半導体量子構造などの物性評価に応用する事である。本年度は、1)の研究目標に重点的に取り組んだ。時間・空間的に集中した光電場を作り出すためには、光近接場技術を駆使しどれだけ微小な光スポットを作り出せるかが重要なポイントであるが、従来の光近接場用プローブの微小開口で形成できる光スポットはたかだか100〜50nmであった。そのため、光近接場用プローブの構造の最適化を行うとともに、開口作製技術を進化させることによって、再現性よく20〜30nmの微小光スポットが作り出せることが明らかとなった。これを利用することによって近接場光学顕微鏡の性能(空間分解能:20〜30nm)は格段に向上し、ベル研究所(米)、マックス・ボルン研究所(独)などの世界の主要な研究グループに比べ大きな技術的アドバンテージを確保するに至っている。その高空間分解近接場光学顕微鏡を半導体量子の電子物性評価に利用することによって、当初の研究計画の範囲を超えた成果を上げることができている。その代表的な成果は、GaAs/AlGaAs量子ドットにおいて、励起子および励起子分子の波動関数を実空間上でイメージングできる可能性を見出した。具体的には、励起子および励起子分子では波動関数の形や広がりが異なることを反映して、近接場発光画像に顕著な違いがある事がわかった。現在、理論計算を平行して進めており、実験結果と比較を行うことで量子ドット中の波動関数の形や広がりなどを明らかにできると考えている。
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