本年度の研究では、近接場光学顕微鏡技術と極短パルスレーザ光技術を融合し空間的・時間的に集中した極限光子場を作り出す事、また非線形分光を積極的に利用して半導体量子構造などの物性評価に応用する事に集中して取り組んだ。時間・空間的に集中した光電場を作り出すためには、光近接場技術を駆使しどれだけ微小な光スポットを作り出せるかが重要なポイントであり、この点を踏まえて開口作製技術を進化させることで昨年度より再現性よく20〜30nmの微小光スポットが作り出せるようになった。また、本年度新しい低温近接場光学顕微鏡装置を試作し、これにより付加的なパルス幅の広がりを生じさせるプローブ先端部以外のファイバー長が1/20に短縮でき、パルス幅の時間広がりについてはかなり押さえ込むことができるようになった。一方、非線形分光を利用した半導体量子構造の物性評価については、以下に挙げるような成果が得られている。自己形成InGaAs量子ドットにおいて、室温における強励起下での単一量子ドットからの発光を詳細に調べ、励起強度に依存した発光線幅の増大・発光エネルギーのレッドシフトが起こることがわかった(論文準備中)。これはキャリアが量子ドットに閉じ込められ、ドット内でのクーロン相互作用に起因した多体効果(オージェ過程による位相緩和時間の減少、バンドギャップ・リノーマリゼーション)で良く理解できることがわかった。また、CdS量子ドットにおいても強励起状態における電子-ホールプラズマが観測され、多体効果が顕著に現れることがわかった。また、昨年から引き高空間分解発光イメージングを利用したGaAs/AlGaAs量子ドットにおける励起子・励起子分子の波動関数の実空間イメージングについての研究も継続して行っている(論文準備中)。
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