1.超流動^3Heの渦糸構造の理論的解明 9つの超流動秩序変数をもつ超流動^3Heでは、通常の超伝導体とは全く事なる量子渦構造が可能である。実際、ヘルシンキ工科大学のグループにより、回転角速度Ω<3rad/sでの渦構造が精力的に調べられ、既に7つの異なる渦構造が発見されている。しかし、より高速の回転場中において、どのような渦が実現されるかに関しては、理論的にも実験的にも未解明のままであった。ランダウ準位展開法を用いて、9つの超流動秩序変数に対するGinzburg-Landau自由エネルギー汎関数を直接最小化し、高速回転場中における安定な渦構造を決定した。その結果、少なくとも5つの新たな渦構造が存在することを理論的に明らかにした。 2.超伝導準古典理論におけるゲージ不変性とホール項 超伝導の動力学で最も強力な基礎方程式となっている「超伝導準古典方程式」を、ホール効果を記述できるように拡張することに成功した。導出された方程式は、重心の時間・空間座標に関してゲージ不変である、という望ましい性質を有している。またホール効果に関与する項も存在する。この準古典方程式は、今後における渦糸動力学の解明に際して、基本的な重要性を持つものと考えている。 3.超伝導ド・ハース-ファン・アルフェン(dHvA)効果の理論 数値的研究と解析的研究を組み合わせ、超伝導dHvA効果の理論的解明をめざした研究、特に超伝導ギャップの異方性とdHvA振動の減衰との関係に注目した研究を行なった。数値計算により、(i)振動の減衰が磁気ブリルアンゾーン内での準粒子のエネルギー分散の増大に起因すること、(ii)この減衰因子がゼロ磁場の極値軌道上での平均エネルギーギャップの大きさに比例していること、を明らかにした。また、振動の減衰に対する解析的表式も導出した。この理論式を用いれば、極値軌道上でのエネルギーギャップの大きさが評価でき、「dHvA振動による超伝導ギャップ・スペクトロスコピー」に道を開くことができたと考えている。
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