1.第二種超伝導体における真木パラメータ_<κ2>の理論的計算 真木パラメータ_<κ2>は、第二種超伝導体の上部臨界磁場H_<c2>近傍における磁化曲線の勾配変化により定義され、この領域の他の物理量の定量的記述に欠かせない。この_<κ2>の計算は1960年代後半に活発に行われ、特にEilenbergerにより詳細な計算が球状フェルミ面に対して行われた。しかし、新たな計算を行った結果、彼の計算が定量的に正しくないことがわかった。そこで、_<κ2>の正しい計算法を確立すると共に、_<κ2>がフェルミ面の形状に大きく依存することを初めて明らかにした。また、この研究により、H_<c2>近傍における他の物理量を定量的に計算する土台が確立できた。 2.第二種超伝導体の上部臨界磁場近傍における電気抵抗の理論的計算 第二種超伝導体における電気抵抗には量子渦の運動が深く関与している。しかし、その定量的計算は、不純物散乱が大きい場合にH_<c2>近傍で行われているだけであった。また、量子渦の運動が電気抵抗の発生とどのように関わっているのかについての直観的描像も確立していない。今回、H_<c2>近傍における電気抵抗の計算を全ての不純物濃度・全温度領域に対して実行し、その濃度依存性を初めて明らかにした。この研究は、量子渦の運動解明に向けた第一歩と位置づけられる。 3.第二種超伝導体の上部臨界磁場近傍におけるエントロピーとスピン磁化率の理論的計算 第二種超伝導体のH_<c2>近傍における理論的計算を、エントロピーとスピン磁化率に対しても行い、それらの不純物濃度依存性と温度依存性を明らかにした。そして、これらの物理量が、絶対零度においては、準粒子状態密度によって決まっていることも明らかにした。
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