研究概要 |
研究実績は以下のとおり. 強相関電子系は近藤格子として記述するのが理論的に最適との観点から、近藤格子理論の構築を続けている。近藤格子理論を典型的強相関電子系の一つである銅酸化物高温超伝導体に応用し、次の成果を得た。 ・高温超伝導体の擬ギャップの理論 反強磁性揺動と超伝導揺動の準粒子スペクトルの繰り込み効果に近藤格子理論を応用した。反強磁性揺動と超伝導揺動が、超交換相互作用と準粒子の対励起過程の仮想交換過程から生じる交換相互作用のため発達する。この2つの交換相互作用は反強磁性スピン揺動により増大される。反強磁性揺動には増大される前の裸の交換相互作用が、超伝導揺動には増大された交換相互作用が効く。いわゆるアンダードープ領域では、反強磁性揺動効果より超伝導揺動効果のほうが大きくなる。主に4波超伝導揺動効果により、準粒子の寿命が短く、寿命巾が大きくなる。このため、化学ポテンシャル近傍の準粒子スペクトルが高エネルギー部分に拡散し、擬ギャップが形成される。d波超伝導揺動効果は異方的に効くため、繰り込み効果は、ブリリアン域の(±π/a,0)と(O,±π/a)点近傍で大きく、(±π/a/2,±π/a/2)近傍で小さくなる。この理論では、擬ギャップ形成が寿命巾による機構のため、超伝導転移温度直上近傍の比較的低温では擬ギャップが温度とともに小さくなることが予想される。この予想は北大の伊土・小田グループの実験結果と一致する。 この成果は、現在投稿準備中である。
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