研究実績は以下のとおり. 強相関電子系は近藤格子として記述するのが理論的に最適であり、かつ容易との観点から、近藤格子理論の構築を続けてきた。近藤格子理諭を典型的強相関電子系の一つである銅酸化物高温超伝導体に応用し、次の成果を得た。 ・高温超伝導体の擬ギャップの理論 成果の詳細ついては、昨年度の実績報告に記載した。結果を今年度初頭に投稿した。公表は閲読過程で多少遅れたが、Physical Review B誌に掲載予定で印刷中である。 ・高温超伝導体における新奇な電子・格子相互作用の機構 最近、高温超伝導体においてフォノンのソフト化、準粒子分散のキンクと、電子・格子相互作用が効いていることを示唆する二つの実験結果が報告されている。いっぽう、1987年春、超交換相互作用による高温超伝導機構を提案した。咋年は、超交換相互作用により超伝導揺動が発達し、それが擬ギャップを生じさせることを理論的に示した。超交換相互作用が重要との、これらの結果に示唆され、超交換相互作用がフォノンにより揺さぶられることにより生じる新奇な電子・格子相互作用を提案した。この電子・格子相互作用は超伝導揺動や反強磁性揺動で増強される。そして、合理的なパラメーターで二つの実験を説明することができる。ただしクーパー対形成機構については、この新奇な電子・格子相互作用よりも超交換相互作用のほうが数倍大きい、と結論できる。この成果は、現在投稿中である。
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