研究課題/領域番号 |
13640344
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
吉澤 正人 岩手大学, 工学部, 教授 (30220619)
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研究分担者 |
中西 良樹 岩手大学, 工学部, 助手 (70322964)
吉本 則之 岩手大学, 工学部, 助教授 (80250637)
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キーワード | 有機導体 / 層状Mn酸化物 / スクッテルダイト化合物 / 超音波 / 弾性定数 / 超伝導 / 金属・絶縁体転移 / 巨大磁気抵抗 |
研究概要 |
本研究は、BEDT-TTF(ET)系有機超伝導体に見られる絶縁体から金属へのクロスオーバー的振舞の起源を弾性定数の精密測定を通して研究することを主な目的とする。本研究を通して、冷凍機を用いた超音波測定装置の開発を行い、室温から3.5Kまでの温度領域で、超音波弾性定数と吸収係数、電気抵抗等の測定の自動測定が可能となった。また、14Tまでの磁場環境実験の整備を行った。これらの装置を用いて得られた結果は以下のように要約される。本研究では、強相関伝導系の弾性異常の系統的理解の観点から、ET系に加えて、スクッテルダイト物質とMn酸化物の絶縁体金属転移に伴う弾性異常に関する研究を行なった。 (1)κ-(ET)_2Cu[N(CN)_2]Brの弾性異常 縦波の弾性定数C_<11>とC_<33>測定を行った。100K近傍に見られる絶縁体から金属へのクロスオーバーに伴い、C_<11>とC_<33>共に40K付近で顕著な弾性軟化減少を示すことを明らかにした。この異常は、バンドギャップが格子の収縮で閉じるという考えに基づくモデル計算との比較から、弾性異常の大きさはほぼ説明できるものの、低温での振る舞いに関しては、電荷状態の変化を考える必要があることが分かった。磁場実験によりこの弾性異常は磁場の影響を受けず、超伝導の起源との関係は薄いことも明らかとなった。 (2)Mn酸化物系における絶縁体・金属転移に伴う弾性異常 層状Mn酸化物La_<2-2x>Sr_<1+2x>Mn_2O_7の研究を行い、Srの濃度変化、つまりホール濃度の一連の変化(濃度系列)によるMnの3d電子状態の変化について、バンド幅、結晶場分裂、重なり積分をもとにモデル化しその妥当性を評価した。加えて、LaのサイトにPrをドープした(La_<1-Σ>Pr_2)_<1.2>Sr_<1.8>Mn_2O_7の弾性測定を行った。この系は4.2Kにおいて約7Tで絶縁体から金属への転移を示す。これに伴い、縦波の弾性定数は顕著な軟化を示し、その後、さらに強い磁場で硬化に転じることを発見した。これらの振る舞いは、同じ絶縁体から金属に移行するET系と全く異なった振る舞いである。Mn系の場合は、軌道の自由度が重要な役割を演じている。 (3)スクッテルダイト化合物の金属絶縁体転移に伴う弾性異常 一般式ReTr_4X_<12>(Re:希土類、Tr:遷移金属,X:プニクトゲン)で記述されるスクッテルダイト型化合物の内、金属絶縁体転移を示す、PrRu_4Sb_<12>とSmRu_4Sb_<12>の弾性定数の測定を行った。PrRu_4Sb_<12>は60Kでの金属絶縁体転移において、弾性定数の硬化、SmRu_4Sb_<12>については16Kにおいて弾性定数に顕著な軟化が観測され、前者はネスティングによるCDWの形成に伴うキャリアの減少で基本的に全ての物性が理解されるのに対し、後者では弾性的性質は複雑で、軌道の自由度の役割も考えてゆく必要があることが明らかとなった。
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