研究概要 |
高温超伝導体のストライプ秩序に関する研究 高温超伝導体発見当初から問題になっていた、Cuあたりのホール濃度P=1/8で起こる超伝導の異常な抑制は、1995年にTranquadaが、(La,Nd)_<1.88>Sr_<1.2>CuO_4大型単結晶を用いた中性子弾性散乱の実験を行い、超伝導を司る銅と酸素からなるネットワーク面において電荷(ホール)とスピンの静的ストライプ秩序を発見したことにより、一気に解明された。我々は、動的ストライプ構造が超伝導の出現する広い濃度範囲で起こっていることから、超伝導発現機構にストライプが関わっている可能性が強いと考え、La系超伝導体以外の高温超伝導体に於いてもストライプを静的にピン止めすれば、La系と同様な1/8抑制が起こると考えて研究を進めている。La系以外の物質として、Bi系超伝導体Bi_2Sr_2Ca_1_<-x>Y_xCu_2O_8を選び、ホール濃度を変化させた多結晶試料で実験を行った、Bi系超伝導体では、ピン止め中心として少量のZnを導入すると、x=0.30-0.35付近(P=1/8付近)で超伝導が抑制される1/8異常を発見した。ミュオンスピン緩和の実験からも、1/8異常の試料において静的なスピン秩序が形成されていることを示唆する結果が得られた。現在は、単結晶による詳細な物性測定を行うべく、育成をTSFZ法で行っている。 低次元量子スピン系における熱伝導に関する研究 最近、低次元量子スピン系において、マグノンによる熱伝導の存在が指摘され興味が持たれている。我々は、低次元量子スピン系における熱輸送とスピン状態を調べるため、二次元スピンギャップ系SrCu_2(BO_3)_2と二次元反強磁性系Cu_3B_2O_6の単結晶をTSFZ法で育成し、磁場中で熱伝導率を測定した。SrCu_2(BO_3)_2の熱伝導は、T=11K以下の低温でピークを示し、磁場の印可によりピークは抑制された。このピークの起源は、スピンギャップが開くことにより第一励起状態のマグノンが局在することから、フォノンーマグノン散乱が減少し、フォノンによる熱伝導が増加するためと結論し、T=20K以上のスピンギャップが閉じた状態では、マグノンによる熱伝導が寄与している可能性を見いだした。Cu_3B_2O_6の研究においては、熱伝導率のピークがネール温度以下の低温で観測され、そのピークが少量のZn置換により著しく抑制された。一方、ネール温度以上の温度域では、Zn置換した試料の熱伝導率が、置換していない試料より大きくなった。これらを踏まえ、ネール温度以下ではZn置換によりマグノンの平均自由行程が減少しマグノン熱伝導が減少する。また、ネール温度以上では、フォノンの熱伝導が支配的であり、Zn置換により格子が硬くなり熱伝導が増加したと結論した。
|