高温超伝導体のストライプ秩序に関する研究 La系高温超伝導体でみられる電荷とスピンの静的ストライプ秩序を、Bi系超伝導体Bi_2Sr_2Ca_<1-X>Y_XCu_2O_8をの単結晶で検証することを目的として研究を行った。まず、Y置換量を0〜0.5まで変化させた種々の単結晶をTSFZ法で育成することに成功した。また、多結晶試料では、ピン止め中心として少量のZnを導入すると、x=0.30-0.35付近(P=1/8付近)で超伝導が抑制されることから、ZnをCuサイトに2.5%置換した単結晶も育成した。これらの単結晶の超伝導転移温度Tcを電気抵抗と磁化の温度依存性から決定した。しかし、最近Bi系超伝導体において不均一性が話題になっているように、単結晶における酸素の不均一によるTcのばらつきや、Y置換したことによる組成の不均一による転移幅の増大が、Tc決定における誤差を大きくしている。現在、アニール条件等を検討し研究を進めている。 低次元量子スピン系における熱伝導に関する研究 種々の低次元量子スピン系銅酸化物の熱伝導を測定し、さらに、磁場効果と銅サイトの不純物置換効果を調べることによってκ_<magnon>を検証し、マグノンが大量の熱を運ぶ機構を解明することを目的として研究を行った。本研究により、TlCuCl_3、Ca_2Y_2Cu_5O_<10>、La_2Cu_2O_5、Cu_3B_2O_6の低次元量子スピン系において、κ_<magnon>の存在が明らかになった。さらに、スピン相関が反強磁性的で、Jが大きく、マグノンの分散の幅の大きな系において、κ_<magnon>が大きいと結論できた。このとき、スピンギャップが開いていると、マグノンの数が減少する低温ではκ_<magnon>が小さくなるが、マグノンが存在する中間温度領域では、マグノン-マグノン散乱が減少するのでκ_<magnon>が大きくなるものと理解できた。さらに、熱伝導が、スピンギャップの形成や抑制、反強磁性転移、スピンフロップ転移、さらには、マグノンのボーズ・アインシュタイン凝縮等のスピン状態の変化に伴って劇的に変化することが分かった。
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