f電子系金属間化合物におけるNMADスピングラス現象の研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13640348
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 李 徳新 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (40281985)
• 研究分担者: 本間 佳哉 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (00260448) ; 塩川 佳伸 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50111307)
• キーワード: スピングラス / フラストレーション / 磁気秩序 / クラスタガラス / f-d混成 / RKKY相互作用 / 磁気緩和 / スピン凍結

研究概要

1、試料合成と新しい物質の探索 スピングラス物質と見られるR_2PdSi_3,R_2CuSi_3(R=希土類金属),U_2IrSi_3,U_2AuGa_3の単相多結晶試料を合成した。なお、新しい物質としてCe_2CuIn_3,Pr_2CuIn_3,Nd_2CuIn_3,La_3Ir_2Ge_2及びCe_3Ir_2Ge_2の存在を始めて確認した。
2、物性測定と解析 今まで持っている試料と新たな合成した試料に対して、ac帯磁率、dc磁化、磁気緩和、比熱、電気抵抗など基礎物性を測定した。その結果、興味深い実験結果が得られた。(1)典型的なNMAD物質Nd_2PdSi_3、Tb_2PdSi_3、Dy_2PdSi_3はそれぞれ弱スピングラス効果を持ち強磁性物質、強磁性-スピングラス転移を有するリエントラントスピングラス、反強磁性-スピングラス転移を有するリエントラントスピングラス物質であることを物性測定結果により明らかにした。(2)U_2IrSi_3は単純なスピングラスではなく、10.5K以下で強磁性クラスタガラスのような振る舞いが認められた。また、電気抵抗は低温側で極小、高温側でブロードなピークなど高濃度Kondo効果のような特徴が観測された。(3)Ce_2CuSi_3とU_2AuGa_3に対する観測された実験現象を単純なスピングラス効果で説明された。4fと5f電子系化合物で現れたNMADスピングラス状態の成因は異なり、前者ではランダムに分布するRKKY相互作用、後者では5f-d混成がそれぞれ重要な役割を果たすことを実験で明らかにした。これらの成果は今年中発表予定である。(4)U_2PtSi_3単結晶試料に対する中性子散乱実験を完成し、長距離磁気秩序が観測されなく、スピングラス状態の存在が確認した。
3、実験設備の整備 平成14年度中SQUID用高圧セルを作製した。一つ研究手段として、これからNMADスピングラス現象の圧力依存性を調べる予定である。

研究成果

• [文献書誌] D.X.Li, Y.Shiokawa, Y.Haga, E.Yamamoto, Y.Onuki: "New Evidences of Spin Glass States Formed in U_2TSi_3 (T=Pd, Pt and Au): AC Susceptibility and Electrical Resistivity"J.Phys.Soc.Jpn.. 71. 418-421 (2002)
• [文献書誌] D.X.Li, Y.Shiokawa, T.Nozue, T.Kamimura, K.Sumiyama: "Metastable Characteristics in Ferromagnetic TbPdIn and DyPdIn"J.Magn.Magn.Mater.. 241. 17-24 (2002)
• [文献書誌] D.X.Li, S.Nimori, Y.Homma, Y.Shiokawa: "Magnetic Ordering of New Intermetallic Compound Tb_2PtSi_3"J.Phys.Soc.Jpn.. 71. 211-213 (2002)
• [文献書誌] D.X.Li, Y.Shiokawa: "Magnetic Behavior of Ge-rich UCuGe"J.Nuc.Sci.Tech.. 3. 164-167 (2002)
• [文献書誌] D.X Li, Y.Shiokawa, S.Nimori, Y.Haga, E.Yamamoto: "Magnetic Behavior in Nonmagnetic Atom Disorder System Ce_2CuSi_3"Physica B. (in press).
• [文献書誌] T.Yamamura, D.X.Li, Y.Shiokawa: "Spin-glass Behavior in Ternary Uranium Compound U_2AuGa_3"Physica B. (in press).