研究課題
基盤研究(C)
Van-Vleck常磁性体PrPt5はハイパーファイン相互作用により非常に強められた擬核四重極相互作用をもつ。この相互作用による零磁場での核スピン準位の分裂は温度にして6mKていどであり核断熱消磁冷凍によって実験可能な温度領域である。擬核四重極相互作用が輸送現象にどのような影響を与えるかを研究するためPrPt5の電気抵抗、帯磁率の測定を超低温でおこなった。予想をしていなかったことであるがこの物質は約200mKで超伝導に転移しさらに2mKで超伝導と強磁性が共存するのを見出した。このような超伝導と強磁性が共存の研究は現在非常に興味がもたれている研究分野である。電気抵抗、磁化測定によるとこの物質は第二種超伝導体であり強磁性の影響がない場合Hc1=4G、Hc2=60Gであり強磁性によりHc1は影響を受けないがHC2は10〜20Gにまで減少する。理論でもっとも興味がもたれている共存相は零磁場下でも強磁性磁化によりマイスナー状態を破壊し、混合状態になるという「自己誘起渦糸状態」であるがこの物質では強磁性ドメインにより超伝導の感ずる有効磁化が小さくなり自己誘起渦糸状態は実現しないと考えている。しかし試料によっては超伝導を示さない物もあるためPrPt5とPtの共存系の試料を合成したが超伝導は見られなかった。同様のPr核磁性が期待されるPrOs4Sb12はP波超伝導体である可能性が強いと考えられており、しかも時間反転対称性がやぶれる超伝導である可能性も指摘されている。この物質を核断熱消磁冷凍器によって0.2mKまで冷却し帯磁率測定を行ったが核磁性は現れなかった。この理由はこの物質はPrPt5よりも超伝導転移は10倍ほど高いすなわち弱い核磁性を強い超伝導が破壊するためであると考えられる。
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