研究概要 |
研究代表者らはシャストリーサザーランド模型とトポロジカルに等価な二次元直交ダイマー物質SrCu2(B03)2について,高圧条件,高酸素圧など合成条件を工夫することにより相互作用の値を変化させ理論で予想されているダイマー相近傍の色々な相を観測することを試みた・その結果SrサイトをBaとCaにそれぞれ30%ずつ置換することに成功した.しかし得られた物質について帯磁率や強磁場磁化曲線に大きな変化がみられなかった.一方,SrCu2(BO3)2では395Kで構造相転移があるが,この転移温度がCaについては減少することが,Baでは増加することが明らかとなった.さらなる置換については合成条件を変えながら現在も継続中である.このような置換による方法はどうしてもランダムネスによる影響が避けられず相互作用などの正確な見積もりは難しい.そこで高圧セルを用いてSrCu2(BO3)2の帯磁率の10kbarまでの圧力効果を調べたところ,面間,相互作用の値が大きくなることに対応してギャップが小さくなることが明らかとなった.外挿すると30kbarが臨界圧力であることがわかった.理論の予想によると面間相互作用を大きくすると反強磁性相が誘起されることが指摘されている.この実験をうけ現在共同研究者とこの圧力範囲での高圧NMR実験を現在計画中である.またSrCu2(BO3)2と同じ直交ダイマー格子を有する物質の探索を行ったところ,Nd2BaZnO5を発見した.物性測定によって2.3Kで反強磁性転移することが明らかとなった.NdはJ=9/2と古典スピン系に近いこと,また異方性が大きいことにより,ギャップ相よりも反強磁性相が安定化されていると考えている.そのほかKIrO3は三次元版の直交ダイマー系のモヂル物質になることを明らかにし現在合成,物性測定を進行している.
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