研究概要 |
研究代表者らはシャストリーサザーランド模型とトポロジカルに等価な二次元直交ダイマー物質SrCu2(BO3)2について,特殊な合成方法,特に低温合成の手法を用いることによって相互作用の値を変化させ理論で予想されているダイマー相近傍の色々な相を観測すること,またはキャリアーの注入を試みた.しかしCaとBaの置換に成功した以外は思わしい結果は得られなかった.そこで,SrCu2(BO3)2について外的圧力を加えることによって物性の変化を調べることにした.その結果,圧力の印可とともにスピンギャップは減少していき,15kbar付近で帯磁率にわずかではあるが異常を見出した.現在,NMRや中性子回折(散乱),ラマン散乱によって何が起こっているか,相転移ならばどの相への相転移なのかということを実験,検討している最中である.また1/8プラトーまでの強磁場と30mKの低温を組み合わせたNMR実験をグルノーブルのグループと共同研究を行ったところ,1/8のプラトー下での磁気構造が初めてあきらかとなった.それはハードコアボソンモデルで予想されていた単純な構造と大きくことなり,大きな単位格子をもち振動した磁化をもつ構造であった.このように電子系に代表されるようなフェルミオン系とは異なり,ボゾン系の秩序・無秩序転移に関する実験的研究の例はこれまで殆どなく物性物理全体に大きなインパクトを与えた.上述したようにSrCu2(BO3)2では低温合成を用いたがその手法をマンガンペロブスカイト酸化物に適応することによりAサイトが秩序したYBaMn2O6を合成することに成功した.これは通常の系と異なり格子のランダムネスが全くない系であることが特徴である.この物質について物性測定を行ったところ,異常に高い金属絶縁体転移温度をもつこと,今までの系ではみられなかった電荷・軌道・スピン秩序構造をもつことが明らかとなった.
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