高温超伝導体は2次元超伝導層と絶縁帯層が交互に一次元的に積み重なった固有ジョセフソン接合系と見なすことができる。この系の最もユニークな点は超伝導層の厚みが極めて薄くデバイ遮蔽長と同程度となるために各超伝導層での電荷の帯電効果が顕著に現れることである。このためにその電磁レスポンスは従来のジョセフソン接合系とは大きく異なることが最近の理論、実験の両面からの研究で明らかになりつつある。本研究では高温超伝導体のサブミクロン幅の微小固有ジョセフソン接合系を作製してこの系における帯電効果をさらに増幅させそれを実際に観測することを目的とした。本研究ではまず高温超伝導体で最も異方性の強い系の一つであるBi2212を微細加工した10μm程度の幅の試料でのジョセフソン磁束のダイナミクスの研究を行った。試料にできるだけ平行に磁場を書け数十Ghz帯のマイクロ波を照射しスラックスフロー状態を作り出した。その結果フラックスフロー状態でのマイクロ波応答にステップを観測できいわゆるシャピロステップがはじめて観測された。これによりコヒーレントなフラックスフローが起こっていることが明らかになった。また微細加工技術を確立し現在さらに小さな量子領域でのジョセフソン接合を作製することを目指した。また異方的超伝導体の超伝導ギャップ構造を熱伝導により明らかにした。特に準2次元的な電子構造を持つ3種類の物質(i)スピントリプレット超伝導体Sr_2RuO_4(ii)重い電子系超伝導体CeCoIn_5(iii)有機超伝導体k-(ET)_2Cu(SCN)_2の超伝導ギャップの構造を決定できた。また高温超伝導体の渦糸の電子構造とダイナミクスをNMRとマイクロ波より研究しどちらも従来の超伝導体とは大きく異なっていることを明らかにした。
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