1.藤絶縁体の典型例であるYbB_12についてYbおよびB原子核の核磁気緩和率を測定した。Yb核の緩和率は磁気励起にギャップがある場合に予想される活性化型の温度変化を示したが、B核の緩和率は温度低下と共に一度活性化型で減少した後に、再び増大し低温でピークを作るという異常な振る舞いを示した。ホウ素原子核の異なる同位体に対する緩和率の比較から、低温での異常な緩和は希薄な磁気モーメントの揺らぎが核スピン拡散によって試料全体の緩和に寄与していることが判明した。この磁気モーメントはYbの欠損などの近くで局所的な近藤1重項を形成できないサイトの周りに生じた、多体効果による磁気モーメントであると考えられる。この不純物モーメントの揺らぎは磁場によって次第に抑制さえるが、16テスラの強磁場でも完全には凍結されないことが分かった。 2.CaB6にLaを微量ドープした物質は、遷移金属元素などの磁性元素を含まないにも関わらず、600Kという高温で強磁性転移を示すことが報告されて注目されているが、磁化は極端に小さく、強磁性状態がこの物質に本質的なものか不純物に起因するものか解明されていない。物質固有の磁化があるとすれば、スピン密度は主にホウ素の2p軌道にあると考えられるので、ホウ素核のNMRにより内部磁場を精密に測定すれば検証できるはずである。本研究ではLaを0.5%ドープしたCaB6の単結晶試料についてホウ素核の内部磁場の異方性を高精度で測定した。5個の試料のうち、2個の試料で有限な内部磁場が観測され、固有の強磁性磁化が存在することが示されたが、試料全体の磁化とはよく対応せず、不均一な磁化と共存していることが示唆された。
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