ペロブスカイト酸化物薄膜においてレーザーアブレーション法による試料の作製を行った。基板をSrTiO_3(001)にし、マンガン酸化物R_<1-x>A_xMnO_3(x=0.4)においてAを2価イオンとなるSr、Rを3価イオンとなるLa、Pr、Ndとしたところ、面内格子定数aを基板の格子定数d=3.905Åに固定することができた。 Rは固体中で互いに全域固溶するので混晶を作ることで、Rの平均イオンサイズをLa(大きいもの)からNd(少さいもの)へと連続的に、しかも精密に制御することが可能となった。このとき面に垂直方向の格子定数cはイオン半径と関連する値となり、その結果c/aすなわち格子の異方性をドープ量を保ったままに変化させ、純粋に結晶場の大きさだけを制御することに成功した。薄膜の物性はAサイトがPrより大きい時は強磁性、小さいときは反強磁性とクロスオーバーが起こり、この組成域では全域強磁性体であるバルク結晶とは本質的に異なり、この作製法による物性コントロールが非常にユニークであることが示された。 放射光を用いた実験では共鳴X線散乱が軌道秩序よりはむしろヤーンテラー的な結晶の異方性を見ている可能性が強まり、ほぼ80%程度以上のヤーンテラー秩序から来る寄与が、従来見られていた放射光実験での軌道秩序説はむしろあまり関与していないことが判明した。
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