極めて高感度のねじれ共振器を開発し、10のマイナス8乗までの極めて微小な歪率(応力に比例)から大きな領域までの広い範囲で固体ヘリウム3の剛性率と内部摩擦によるエネルギー損失を精密に求めている。その結果、転位の運動が開始される最低の歪率(応力)を決定した。この臨界歪率は最大で約1.5ppmと、古典的固体と比べて極めて小さい。更に、0.3K以上の高温領域で熱活性型の温度依存を示したが、転位が乗り越えるべきパイエルスポテンシャルの大きさはモル体積(密度の逆数)に大きく依存することが分かった。僅かモル体積が1.6%減少するだけでポテンシャルは81%も増加した。これは期待されていた結果であり、結晶ポテンシャルを調節可能な超純粋固体の特徴を生かした結果である。 更に、固体3Heはフェルミ粒子の特徴のため、0.3K以下の液体と固体の共存線の勾配が「負」となる。これは「固体のエントロピーが液体状態より大きくなる」という極めて異常な現象に起因する。そのため、この固体3Heは「冷却すると融解する」特異な密度領域が存在する。この領域で温度を下げながら「量子的融点」に向けて転位の運動を測定したところ、「熱揺らぎ」ではない本質的な融解の前駆現象を初めてとらえることができた。これは大きな量子効果である。これらの成果は、科研費企画研究「摩擦の物理」(2001年8月、阪大理)において「固体ヘリウム3の融解と内部摩擦」の題目で報告され、その報告書に掲載されている。そして、この夏の低温国際会議(LT-23、広島)で速報すると共に、論文にまとめる予定である。
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