研究概要 |
強相関電子系物質,特にCuやRuの酸化物では,電子相関の変化に伴い,金属-非金属転移,エキゾチック超伝導・磁性が観測される.特にLa214型結晶構造を持つ系では,磁性と超伝導対称性,格子変形と電子状態の関係の統一的理解をめざした研究に適している.電子相関を変化させるには,圧力実験が効果的である.圧力は系を乱すことなく,電子相関,構造を制御可能であり,各種物理量の圧力係数決定,相図完成などが可能である. 平成13年度は 1)La_<2-x>Sr_xCuO_4の格子不安定性の問題 2)モット絶縁体Ca_2RuO_4の圧力効果 3)2GPaを越える圧力を発生するピストンシリンダー圧力装置の開発について研究を行った. この中で注目すべき結果は,モット絶縁体Ca_2RuO_4を加圧し0.5GPaで金属化すること,そして,この絶縁体-金属転移は反強磁性-強磁性転移を伴っていることを発見した.さらに,この強磁性転移温度は5GPa以上の加圧で減少し始め,これを外挿すると10GPa程度圧力でT_c消失と超伝導の出現,すなわち量子臨界点が期待される.また,これらの相転移はRuO_68面体の歪みによる電子状態の変化であると考えられる.今までにこの様な多彩な相転移を示す,強相関電子系酸化物は例がなく,この系の圧力相図が完成されたなら,強相関電子系で見られる量子現象の理解が気に進むことが期待される.特に,超伝導と強磁性が共存しているかが興味深い.
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