研究概要 |
強相関電子系物質のおもしろさは,エキゾチックな機構によって現れる多様な量子凝縮相にある.具体的には,モットの金属-絶縁体転移,遍歴電子磁性,エキゾチック超伝導,巨大磁気抵抗など,他では見られない量子現象が現れる.それらを理解するため,量子臨界点,低次元性,スピン揺らぎ,マージナルフェルミ液体論,軌道秩序などの新概念が提唱されている.中でもRu酸化物では他に類を見ないほど多彩な量子現象が現れる.具体的には,Sr_2RuO_4はp波超伝導を基底状態に持つ2次元Fermi液体金属である.これに対しCa_2RuO_4は反強磁性を基底状態に持つモット絶縁体である.これまでの我々の研究により,Ca_2RuO_4は加圧によってモット転移し,"強磁性を基底状態に持つ2次元金属"になることが明らかになった. 平成15年度は,新規にNa不純物を低く抑えたRu原料を用いて不純物の少ない良質単結晶の育成に成功した.さらに,平成13,14年度に開発した高圧装置を利用し,2.6GPaの圧力で絶縁体相を完全に消し,100mKまで電気抵抗の測定した.その結果,この圧力では超伝導は出現しなかった.しかし,抵抗の温度依存性は,T_c以上は2次元遍歴電子強磁性の理論で期待されるT^<4/3>でスケールされ,T_c以下では磁性を担う電子が遍歴と局在の両面を持っていることを示唆された.また,今回育成した試料は残留抵抗値が1.6μΩcm, RRR〜200である.酸化物そして圧力誘起金属としては極めて純量であることを意味し,量子振動の測定やエキゾチック超伝導の出現が十分期待できることが分かった.
|