研究概要 |
本年度の研究実績を以下に示す (1)昨年度構築した液体ヘリウム温度の誘電率測系をもちいて,Bi系母物質Bi2Sr2RCu208としてR=Dy, Erの単結晶試料の誘電率の周波数依存性,誘電率の実部・虚部の周波数特性の測定を行った。得られた結果は,基本的には可変領域ホッピングで記述できる,強く局在した電子系として理解できるが,その異方性を含めた定量的な理解にはまだいたっていない。 (2)新しい高温超伝導母物質としてBi2Sr2-xLaxCaCu208の単結晶作製を試み,x=0.8付近の組成で安定な成長が得られた。この系は,我々が研究してきたCaサイトをランタニドで置換した系と同様に,SrサイトをLaで置換し,Laイオン濃度を変化させることでキャリア濃度を制御できる系である。得られた結晶の抵抗率,熱起電力などの異方性を精密に測定した。その結果,同じ程度のキャリア濃度を持つCa置換試料にくらべて,Caサイトに乱れをほとんど持たないため移動度が高く高温で金属的伝導が実現していることが明らかになった。 (3)高温超伝導体とよく似た2次元的伝導性を持つ有機導体(BEDT-TTF)2RbZn(SCN)4は,190Kで電荷秩序を示すことがわかっている。この系の誘電応答を調べ,銅酸化物との比較をこころみた。この系の誘電応答は,この系に電荷秩序と伝導電子が共存していることを強く示唆している。今後はこの共存状態を定量的に調べ,銅酸化物と比べたい。
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