研究概要 |
本申請研究の目的は,高温超伝導体母物質および2価の銅を含む反強磁性絶縁体の単結晶の誘電率の温度依存性・異方性・周波数依存性を精密に測定し,母物質の誘電応答の特徴を実験的に明らかにするものである。 本年度は。Bi2Sr2DyCu2O8とLa(Cu,Li)2O4の100〜1MHzの誘電率を4.2〜300Kまで異方性を含めて測定した。前者は代表的な高温超伝導体母物質絶縁体であり。後者は高温超伝導体母物質絶縁体のCuO2面に不純物であるLiをドープした資料である。この2つの系を比較することによって,高温超伝導体母物質にみられる誘電応答の本質的振る舞いを調べた。 我々は,Bi2Sr2DyCu2O8の80Kより高温の誘電率がデバイの誘電綬和の式で表されることを見出した。一方。他のグループは,誘電率は4.2K付近の低温領域で可変領域ホッピング(VRH)であらわされるべき乗則に従うと報じている。 今回の測定と解析によって,誘電率の周波数依存性は,デバイの誘電緩和の式からVRHのべき乗則まで連続的に変化するということを見出した。しかもその振る舞いはCuO2面の乱れの程度には依存しない(クロスオーバー温度は乱れの度合いとともに上昇する)。この結集から,高温超伝導体母物質の誘電応答は,本質的にはデバイの式に従う誘電綬和であり,低温で乱れの効果が顕著となってVRHに連続的に移行することがわかった。
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