四面体型の構造を有する銅錯体化合物とバタフライ構造を有するニッケルの四核錯体化合物の単結晶試料を合成し、帯磁率と磁化測定を行った。前者の化合物では帯磁率は10K辺りに山をもち、低温で零に向かう振る舞いが観測された。この試料の単結晶の1.3Kでの磁化は緩やかに低磁場から増加して10T辺りに初段のプラトーを作った後に20T辺りで急激に増加し飽和する。現在これについて四面体モデルで解析中である。後者の化合物では小さいながら良質の単結晶が得られたのでESR測定もあわせて行った。帯磁率は単調に高温側から増加するが、帯磁率と温度の積は高温側から減少し、反強磁性的な相互作用が支配的なクラスターのそれであった。1.3Kの55Tまでの磁化曲線は低磁場から単調に増加し、飽和磁化の1/2でプラトーを形成した後に増加し3/4の大きさの所で再度プラトーを形成した。これに関してはバタフライ構造の真中の二つのスピンが強く強磁性的にカップルしてそれらと端のスピンが弱く反強磁性的に相互作用していると考えて現在解析を行っている。ESR測定はパルス磁場を用いた遠赤外領域の測定を行ったが、gが2.25のシグナルと4.5位の弱いシグナルが観測された。これらはシングルイオン異方性DとEを考慮に入れて説明ができる単純なものである。 その他従来からやっているスピン量子数1の反強磁性ボンド交替鎖に関して詳細なESR測定を行い、基底状態研究を行った。また、結合の特殊性から強磁性-強磁性-反強磁性-反強磁性の相互作用を有する銅の錯体化合物の単結晶の合成に成功し比熱、磁化、ESR測定を行った。量子フェリ磁性体に特徴的な低温の有限の比熱や磁場中の振る舞いが観測され、また、磁化は飽和磁化の半分のプラトーと急激な飽和磁場近傍の増加を観測した。ESRに関しては典型的な一次元磁性体の振る舞いが観測されたが、一次元反強磁性体とは異なる線幅の温度変化が見られた。
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