研究概要 |
1.高田は、保存近似法とパウリ原理を結びつけ、全ダイアグラムを包含する高度に自己無撞着な彼の理論(1995)に基づいて、電子液体の準粒子のエネルギ-E(p)を計算した。その結果、安原らが1999年に得た「角度依存光電子分光から従来推測されていた単純金属の占有バンド幅の縮小は、終状態に対してE(p)を用いて解析し直せば解消するばかりでなく、占有バンド幅は交換相関のため逆に多少拡がるという結論」を追認補強した。一対あるいはプラズマ励起と多対励起間の不可分な結合の様相を取り込んだ最初の計算である。 2.高田は同理論に基づいて、全金属密度領域にわたる電子液体の動的構造因子S(q,ω)を正確に計算し、解釈に安原も協力した。この計算では、低エネルギーでωに比例する一対励起の寄与が粒子・正孔多重散乱の影響で強められる様相中間エネルギー領域で一対多対励起間の不可分な破壊的干渉に原因するスペクトル構造の平坦化が出現している。RPAとは著しい相違が存在することが判明した。 3.石原らは、安原・高田理論(1991)に基づいてNaのバンド計算を実行し、占有バンド幅は交換相関の影響で10%以下拡がる結果を得た。フェルミ面の異方性は、伝導電子間の交換相関の影響を殆ど受けず、擬ポテンシャルで決められることを確かめた。 4.安原らは、密度汎関数理論に基づくバンド理論を、LDAを超えて発展させるため、軌道に依存する交換エネルギー汎関数と共に使用すべき軌道に依存する相関エネルギー汎関数を、電子液体の長距離、中間距離、短距離相関の知識を借用して構築した。重いフェルミ系の電子構造は、この軌道に依存する相関エネルギー汎関数の大きさを出来るだけ稼ぐため、フェルミ準位近傍の状態密度を異常に鋭く高めるような軌道エネルギーを、伝導電子とf電子とが混成して自己無撞着に再構築する結果であると予見される。
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