研究概要 |
本研究では、カーボンファイバーに発生する1/f抵抗ゆらぎの測定と解析を行った。実験では、原子の振動状態と抵抗ゆらぎの関係について調べるため、カーボンファイバーを試料とした抵抗ブリッジ回路を真空チャンバー内に構成し、ファイバーに印可する張力を変化させながら抵抗ゆらぎの測定を行った。張力を印加すると原子間隔が広がり、原子間の非線形相互作用が変化するため、抵抗値及び抵抗値のゆらぎに変化が生じると考えられる。測定の結果、張力を0〜1×10^<10>(N/m^2)と変化させると抵抗ゆらぎの1/fスペクトルの強度は10倍以上大きくなることが分かった。これに対し抵抗値そのものは約4%程度増大するだけであった。このことは電子の散乱に与るフォノンの数の平均値はあまり変化しないが、その時間的なゆらぎは著しく増大することを示している。以上より、抵抗の1/fゆらぎ発生が原子振動の非線形に基づくフォノン数のゆらぎに起因していることが推測された。この結果はJapanese Journal of Applied Physics, vol.40, pp.L994_L996(2001)およびNoise in Physical Systems and 1/f Fluctuations 2001, pp.199_102で報告した。 また、フォン場を粘性流体、電子を注入粒子に見立て、粘性流体中に粒子が注入されたときの速度変化を解析し、多数の粒子がランダムな速度で注入されると粒子の平均流量が1/fゆらぎとなることの解析的検討を行った。この結果はJournal of Physical Society of Japan, Vol.70, pp.2798_2799(2001)で報告した。
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