研究概要 |
平成13年度までの研究では、カーボンファイバーに張力を印可した状態すると発生する1/f抵抗ゆらぎの強度が変化することから抵抗の1/fゆらぎ発生が原子振動の非線形に基づくフォノン数のゆらぎに起因していることが推測された。これをうけ平成14年度は一次元原子鎖において原子間の非線形ポテンシャルの形状を様々に変化させて振動のシミュレーションを行った。その結果、cosh型(またはそのテーラー展開型)ポテンシャルを仮定すると、特定のフォノンモードのみにエネルギーを与えても十分時間が経過すればすべてのフォノンモードに等分配されることがわかった。また、エネルギーは平均的には等分配されていてもモード間で授受が行われ、それに伴って電子の散乱断面積が変化する。このゆらぎを求めスペクトル解析した結果、約4桁にわたって1/f^α (α≒1.2)のスペクトルを示すことがわかった。このシミュレーション結果は前年の実験結果に符合するものであり、その内容はNoise in Physical Systems and 1/f Fluctuations 2003,(掲載決定)に報告した。さらに、フォノンモード間の相互作用とそれに伴うエネルギー分配はモード空間内のエネルギー拡散と捕らえることもできる。そこで次元数が整はない場合も含めた空間内での拡散とゆらぎの発生についての解析を連続系の場合と離散系の場合について行った。これらの結果はJapanese Journal of Applied Physics,(掲載決定)に報告した。
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