研究概要 |
平成15年度の研究ではカーボンファイバーの温度を変化させながら抵抗値とそのゆらぎの測定を行った。その結果、温度の増加に伴ってキャリアが増加するため抵抗値は下がるのに対して抵抗の1/fゆらぎは増加することがわかった。この結果は1/fゆらぎの発生が原子間の非線形相互作用に基づくものであり、原子振動の増加に伴って非線形効果が顕著になったためと考えられた。 また、一次元原子鎖において原子間の非線形ポテンシャルの形状を様々に変化させて振動のシミュレーションを行った。その結果、cosh型(またはそのテーラー展開型)ポテンシャルを仮定すると、エネルギーは平均的には各フォノンモードに等分配されていてもモード間で授受が行われ、それに伴って電子の散乱断面積が変化する。このゆらぎを解析した結果、約4桁にわたって1/f^α(α≒1.2)のスペクトルを示すことがわかった。このシミュレーション結果は前年の実験結果に符合するものであり、その内容はNoise in Physical Systems and 1/f Fluctuations 2003, PP.667-670(2003)に報告した。この報告後さらにシミュレーションを進めた結果、原子間の相互作用の非線形性のうちべき数4次のポテンシャルが主に1/f^αゆらぎの発生にかかわっていることがわかった。 さらに、フォノンモード間のエネルギー分配はモード空間内のエネルギー拡散と捕らえることもできることを考慮し、次元数が整数ではない場合も含めて解析を行った。その結果、次元数をNとして、N次元空間のある1点に白色雑音を加えるとその点におけるゆらぎは1/f^<・(2-N)>型スペクトルとなることがわかった。これらの結果はJapanese Journal of Applied Physics, vol.42, PP.2887-2893(2003)に報告した。
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