(1)希土類化合物CeB6における四重極秩序の秩序パラメーターについては、我々のこれまでの研究によって、Γ5四重極の反強的秩序で、磁場下で反強的八重極が強く誘起されることが分かっている。今年度は、それを基礎に、四重極のダイナミクスの研究を行った。目的は二つある。一つはフランスのA.Bouvetによる中性子非弾性散乱実験結果の理論解析がないので、その実験の理論的解析であり、もう一つは、このような軌道縮退のある場合の集団励起を扱う方法を作り上げることである。前者に関しては、運動方程式の方法を適用して励起モードを求め、中性子散乱の強度も求めた。それをBouvetの実験結果と比較して、分散の大きい、最もエネルギーの低いモード(最も強度が強い)については同定出来た。しかし、他の二つの弱いモードについては、まだ、完全な同定が出来ていない。これは次年度に継続される問題である。後者はHolstein-Promakoffの方法を軌道縮退のある場合に拡張し、それと運動方程式の方法との関係を明瞭にすることである。線形近似の範囲では、予想されたように、両者は同等であことが分かった。現在、線形近似をこえた取扱いをしている。 (2)Yb4As3は低温で電荷秩序の結果一次元鎖が形成され、その一次元鎖はスピン1/2のハイゼンベルグ反強磁性ハミルトニアンに交替的ジャロシンスキ守谷項と交替的gテンソル項によって記述されることが分かっているが、そのような場合の励起スペクトルの分散関係などがどうなるかについて詳しく調べた。その結果、磁場下で励起にギャップの形成される様子が分かった。分散関係は実験で観測された特徴と一致しているが、同時に、興味ある特徴がこれまでの実験では調べられていない領域にあることが分かった。今後の実験が必要である。これらの結果はアメリカで開かれた「強相関電子系国際会議」、仙台で開催された国際会議、福岡で開かれた「日仏シンポジウム」の三つの国際会議での招待講演において発表した。
|