動的密度汎関数理論を剛体四面体分子系から成る高密度液体に適用するにあたり、剛体分子系のOrnstein-Zernike積分方程式をたて、これを数値的に解き直接相関関数を2分子間の相対位置の関数として求めた。これが動的密度汎関数理論をもとに分子分布の時間変化を議論して行く上での唯一の入力情報となる。ところがここで一つの難点が指摘された。この入力情報をもとに同理論から得られる密度汎関数に対する時間発展方程式を解析的に解くことは不可能である。また、これを等価なLangevin方程式に焼き直して数値的に解くことは高密度下ではやはり困難であることが他のグループの研究から容易に推測される。研究代表者は同方程式を格子気体系にマップすることでこの困難を回避して来たが、このマッピングは希薄極限で厳密ではあるが高密度下では近似的でしかない。剛体球系では分子動力学をはじめとする多くの計算機シミュレーションの結果が蓄積されており、これらとの比較によってこの近似の妥当性を認めることが出来た。この意味で剛体四面体系に対する直接シミュレーションが急務となり現在Monte Carlo法を使ったコードを作成しているところである。これと並行して分子密度分布の「しわ」を可視化するためにワークステーションと可視化ソフトを購入し、自作ルータとともに計算環境を整備した。 また当初の研究計画以外にトポロジカルフラストレーションによる構造緩和のスローダウンが期待される系として正四面体分子から成る沃化錫の高圧下での液体状態に着目し、放射光X線回折によるその場観察実験を行うための研究チームを組織し実際に立ち上げた。沃化錫の高圧下での液体の性質はその平衡状態のそれすら充分に研究されていない。そのため今年度はまず低圧固体相の融解曲線を求めた。来年度早々に論文として投稿する予定である。
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