1 高密度四面体分子液体の形状因子と構造因子及び秩序変数の効率的計算方法の確立 トポロジカルフラストレーションによる構造緩和のスローダウンが期待される高圧化での沃化錫液体の実験的研究を推進した。SPring-8のBL14B1ステーションに設置された高温高圧発生装置を使用してエネルギー分散法による沃化錫液体の放射光X線その場回折実験を行った。トポロジカルフラストレーションによる分子のクラスタ化をディテクトすべくエネルギー分散法においても有意な形状因子を構造因子とは分離して抽出する必要があり、このためFunakoshi-Kawamuraの方法の基本的なアイディアを借用し更に効率的な解析方法を開発した。この方法を現在オンサイトでの解析に供するためのソフトウェアを制作している。 2 動的密度汎関数理論の基礎部分の補強 遅い緩和現象を動的密度汎関数理論によって系統的に議論する上でこれまで明らかになっている弱点についての基礎的研究に着手した。同理論での密度汎関数の時間発展式はSmoluchowski方程式を粗視化して得られたものである。ところがSmoluchowski方程式自体は高粘性極限で成立するものであるから粘度が低い液体については根本的な理論の立て直しが必要になる。そこで後者の場合に対しては局所密度の代わりに位相空間内の作用と角振動数を粗視化変数に取り直す方が適切である。位相空間内に張られたenergy landscape上の拡散方程式の導出を目指す。また最近本理論での粗視化の議論は原理的には可能だが現実的には困難との指摘がなされてたが、粗視化レベルを下げた場合にβ緩和が正しく記述されることを示すために新たに数値計算のプログラムを開発した。
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