研究概要 |
粒状体中に空洞領域があると,そこに流れ込む流体の流量や空洞中心流速が増加する.この予測の検証や複数個の空洞の相互作用を調べるために,新たな実験装置を作製して詳細な測定を行った. 1.流速場への影響:2つの空洞の中心間距離と流れに対する迎え角を系統的に変化させ,両者の相互作用により流量が減少する配置や増加する配置などを明らかにした.これを多数の空洞の配置に応用すると,特定の空洞に多量の水資源を誘導したり地下汚染物質を回収したりする技術に道が開けるものと思われる. 2.流れによる空洞の崩壊と成長:流速の局所的な加速によって粒状体空洞の構造破壊,さらには地滑りや雪崩へと発展する危険がある.前述の実験装置を用いて,空洞上流側壁面の崩壊が起こる臨界応力や空洞成長の速度等について定量的に測定した.2っの空洞の相互作用により空洞崩壊が特異的に成長する配置を明らかにした. 3.空洞が円からわずかに変形した場合の流れ場への影響を解析的に求めた. 4.数理モデルの構築:実験で得られた空洞崩壊の知見を取り入れてセルオートマトン・モデルを考案し,粒状体中に散在する複数の空洞系に応用した.これによると,粒状体の堅さや流速の違いに応じて空洞の移動,伸長,合併などが生じ,より大規模な空洞ネットワークが形成される過程が示された. 5.空気中にある粒状体の薄層を鉛直加振すると,層には定在波や曲げ波が発生し,やがて層状の媒質が崩壊していく.この過程を実験的に調べ,連続体における座屈理論と曲げ波理論で説明した. これらの研究はミクロな素過程とマクロな流動を結び付け,しかも従来の連続体近似と分子動力学のギャップを埋める新たな研究手法の開発にもつながるものと期待され,その成果の一部は関連学会誌の論文および国内外の学会(京都大学数理解析研究所シンポジウム,第9回アジア流体力学国際会議)などで既に公表されている.
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