研究概要 |
本計画の目的は、固体水素を非線形ラマン媒質に用いて真空紫外域における実用光源を実現することである。すでに確立した、「極めて高いラマンコヒーレンスを固体水素内に生成する技術」をもとに、それを高周波(125THz)のローカルオシレータのようにみなし、200nm領域の単一周波数波長可変光源を効率よく変調することを試みた。以下に二年間にわたる成果をまとめる。 1,200nm領域の波長可変単周波数パルスレーザー光の発生 YAGレーザーの四倍波(266nm)とTi:Sapphireレーザーの基本波(〜827nm)の和周波光(非線形結晶:BBO)をとることによって201nmのレーザー光を両方の励起光からのエネルギー変換効率で10%で発生させた。YAGレーザーとTi:Sapphireレーザーは、それぞれ周波数純度の極めてよい連続波YAGレーザーと連続波半導体レーザーで注入同期がかけられた。10〜20nsのパルス幅に対してほぼフーリエ変換限界の線幅が実現されていたので、その和周波光として発生させた201nmレーザー光もパルス幅(10ns)に対してフーリエ変換限界の線幅が実現されたと考えられる。 2,1で発生させた201nm波長可変単一周波数パルスレーザー光を固体水素中に導入し、断熱的ラマン過程を通してあらかじめ固体水素中に生成したコヒーレントバイブロンとビートさせた。バイブロンの振動数である125THz高周波側にシフトした186nmの真空紫外レーザー光を8%の量子効率で発生させた。 3,2で発生させた真空紫外レーザー光の実用性を示すため、酸素のSchumann-Rungeバンド内の一本の遷移:B^3Σ_<-u(v'=8,N'=20)←X^3Σ_<-g>(v"=0,N"=19)、波長185.987nmを選びレーザ分光を試みた。真空紫外の波長領域で50MHzの分解能でレーザー分光ができることを示すとともにこの遷移のプロファイル及び吸収断面積を正確に評価した。
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