研究概要 |
Neを標的とした直接光二重電離過程で生じる光電子のTDCSの測定を,新たに設計開発した実験装置を使って,物質構造科学研究所・放射光施設でおこなった.Neを標的にする場合は,オージェ過程の存在を考慮して慎重に光のエネルギーを決定する必要がある.そこで,以前に直線偏光でおこなわれているNeの直接二重光電離過程の実験を参考にして,反応後の余剰エネルギーが30eVを放出光電子の運動エネルギーとして1:1,1:8に分配する場合について円偏光をつかい実験をおこなった.また,放出電子系の終状態が電子相関に与える影響も同時にしらべた.その結果,NeのTDCSはHeに比べて複雑となり,放出電子系の終状態によって大きく異なることがわかった.Neの測定結果に対して,Heと同じ解析方法が適用できるか現在検討中であるが,NeのTDCSから信頼性の高い電子相関因子を引き出すためには,直線偏光を使った実験を含め,さらなる測定が者要であるとおもわれる. Heに対する円二色性(CD)にあたわれるダイナミカルノードに関する研究も進めた.円二色性には,検出器の幾何学的な配置や光の偏光状態に依存してその強度が0になる放出光電子間の相対角度と,反応のダイナミックスによって0になる相対角度が存在する.幾何学的な配置でCDが0になるのは,2つの光電子の運動量ベクトルと光の回転方向を表すベクトルが四面体を作らない場合で,この時相対角度0°と180°にノードが現れる.一方,反応のダイナミツクスによって生じるノードは,理論的な計算で,90°近辺に現れることが予想されているが,実験的な研究はなされていない.今回,直線偏光の寄与を消すために,偏光楕円の主軸上に回転可能な分析器を置き,かつ,固定分析器で検出する光電子のエネルギーを3eVに固定して光のエネルギーを変化させることで,CDの分配比依存性を調た.その結果,CDの分配比依存性に現れるダイナミカルノードを観測することに成功した.
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