研究概要 |
くり込み群による手法(RG法)の新しい展開として、symplectic mapの長時間発展を記述するsymplecticity-preserving reduced mapを一般的かつ系統的に導く方法を見出した。すでに前年度までの研究により、ある種のsymplectic mapについては、reduced mapを発見的な手法により導出できていたが、今年度の研究により、naive (or proto) RG mapが、あるHamilton系の連続時間発展のLiouville expansionに他ならないという重要な事実を見い出した。これを用いて、RG mapのsymplecticityは、対応する連続時間のHamilton系のsymplectic差分化により回復できることがわかった。このように、symplecticity-preserving reduced mapの導出は、対応する連続時間のHamilton系のHamiltonianを構成することに帰着され、このHamiltonianはnaive RG mapがその時間発展のLiouville expansionであることを使うと容易に構成できることを示した。 この一般的な新処方の応用として、2次元(非可積分)symplectic mapの楕円点近傍の共鳴島形成の解析に成功した。楕円点近傍が共鳴(有理)振動数で振動している場合は、一般に共鳴島(Poincare-Birkov's neckless)が形成されると思われているが、実際に形成されるかどうか、また、共鳴島の大きさなどは、考えている系を具体的に解析しないとわからない。新たに開発したRG法を用いて、有理楕円点近傍でsymplecticity-preserving reduced mapを構成した。このアプローチの長所は、このreduced mapの固定点が、共鳴島の「節」となるため、共鳴島の存在・非存在がその固定点の解析のみによって示すことができる点にある。この固定点解析により、一般に、最も大きな共鳴振動数(2π/3)の場合は、共鳴島生成に十分な数の固定点がないため、共鳴島生成は起こらないが、より小さい共鳴振動数(2π/k, k=4,5,6,...)では共鳴島が生成することを明らかにした。特に、Henon mapの場合、2π/4の振動数の場合にも、楕円点近傍には共鳴島が生成されないことを示すことができた。さらに、これらの結果を元のsymplectic mapの数値計算によって確認した。
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