本研究では、より進化した特異摂動法として「くり込み群による手法(RG法)」を発展させ、これを用いて物理的に興味ある非線形力学系の大域的振舞の解明をめざした。 1.従来の研究により、連続的な独立変数については、RG法の処置法は、ほぼ確立していると言えるが、カオス系として知られている非可積分シンプレクティック離散写像系について、初めて、一般的なRG法の処置法を開発するとともに、カオス系の長時間にわたる漸近的振舞を与える縮約写像を導き、その位相構造の解析的解明を行った。 2.リー対称性と「くり込み群」を結合した手法の改良と拡張を行った。従来の手法では、リー対称性に任意関数が含まれる(無限次元の対称性)ことを境界値問題の解法に利用していたが、有限次元の対称性しかない場合でもfunctional self-similarity条件を退化させることにより、ある種の境界値問題が厳密に解くことができることを示した。さらに、物理的に興味ある解だけに探索を制限することにより、より広いクラスのリー対称性が得られることを示し、この拡張されたリー対称性を用いて、星のモデルである自己重力ガス球の、未知の広義相似型解を導くことに成功した。 3.従来のRG法の短所を改善するため、繰り込まれる発散解を求めずに、RG方程式を導出する方法「proto-RG approach」を開発した。また、多数自由度の一般の反応拡散系から、RG法を用いて、縮約系としての種々の位相方程式を統一的に導出した。
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