研究概要 |
本研究では,界面に閉じこめられた高分子鎖間の二次元的な相互作用を調べるため,これまでにない機器構成による動的光散乱分光装置の開発と,主としてコロイド分散系および3次元,2次元高分子系の粘弾性測定を試みてきた.以下にこれまで得られた成果と,今後の研究の展開,見通しについて述べる. 1.時間分解光子計数法を用いて動的光散乱分光システムを構築した.光子計数値の時系列データを直接コンピュータに集積し,ソフトウェアにより周波数解析を行う.さらに,音響光学周波数シフタ(AOF)2段を用いた光ヘテロダイン法を導入することにより,粘弾性スペクトルの観測が可能となった.この装置により,市販のハードウエアによる光子相関分光計では困難な,非ガウス過程や高次相関の観測が可能となった.このようなシステムは,2次元系での異常拡散過程の解析を行うためには不可欠である. 2.界面ダイナミクス観測のモデル系として,流れの場の中のコロイド分散系及び水-非イオン性界面活性剤-油からなる3元系のヘテロダイン動的光散乱分光の観測を行った.多分散系,粒子間相互作用の粒子系の平均流速の観測可能であることが確認できた. 4.水面上に展開した高分子超薄膜からの光散乱信号は極めて微弱であり,本研究で製作した分光器では十分なS/Nが得られなかった.光ファイバ光学系のスループット向上と入射光源レーザの高出力化が,今後の課題である. 5.本研究で開発したシステムは,その汎用性を生かして,今後様々な複雑流体の観測に応用可能である.
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