本年度は、まず散乱電子用および入射電子用の擬似半球型エネルギー分析器の設計と製作を行った。それらは特注品として(有)京和真空機械製作所より備品として購入(申請設備)され、また同時に、分析器入り口部に減速用のレンズシステムを取り付けた。これに伴い、現有の真空容器の改造も行った。それら装置の改造の一方で、パルス電子ビームのみを用い、飛行時間型質量分析器を用いての簡単な分子の解離性イオン化の実験(同時測定ではない)も、メタン、および水の分子を標的として行った。 これらの実験の結果は、以下に示す4つの学会および研究会で発表されている。(1件は発表予定) ・「散乱電子-生成イオン同時測定法による分子の超起状態の崩壊過程の研究」、原子衝突研究協会第26回研究会、2001年8月23-25日、立教大学、講演概要集p53 ・「タイムラグ飛行時間法を用いたフラグメント水素イオンの並進運動エネルギー測定」、第42回真空に関する連合講演会、2001年10月17-19日、機械振興会館、講演概要集p98-99 ・「電子衝突による簡単な分子の解離性イオン化」、分子科学研究所研究会「原子分子の価電子素過程ダイナミクス」、2002年2月18-19日、岡崎コンファレンスセンター(招待講演) ・「電子衝撃による水分子の解離イオン化」、日本物理学会第57回年次大会、2002年3月24-27日、立命館大学びわこ・くさつキャンパス(発表予定) このほか、衝突電子エネルギー500eVで、ヘリウムおよび一酸化窒素のエネルギー損失スペクトルを比較的小さな散乱角(2°〜8°)で観測し、分析器の評価を行った。これまでのところ、エネルギー分解能は半値全幅(FWHM)で100meV程度であるが、許容遷移とみられる振動の各ピークと禁制遷移とみられるそれらの強度比が、散乱角の増加と共に変化していく様子が観測されている。
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