研究概要 |
中・低エネルギーイオン散乱分析において、単一・大角散乱における荷電変換、非弾性エネルギー損失、散乱後のスペクトル形状は、分析精度の向上とその可能性を広げる意味で極めて重要である。ガス標的を使った散乱実験では、標的密度が非常に小さく、十分な収量を確保するためには、測定は小角散乱に限定される。我々は、表面再構成のない単結晶清浄表面(MgO(001)、NiSi_2(111)、KI(001)等)を用い、チャネリング入射-Blocking出射のダブルアラインメント条件を設定することにより、擬単回・大角散乱の測定を可能にした。また、特に、Si(111)-√<3>×√<3>-Sbを形成し、Sbからの単回・大角散乱による非弾性エネルギー損失及びスペクトル形状を調べた。結果は、Grande-Sciwietz達による衝突径数に依存した理論計算値と比較的よく一致した。スペクトル形状は、非対称Gaussian型で近似は可能であるが、出射角が小さく(表面に対して)なるとズレてくるので、さらに系統的に調べてみる必要がある。いずれにしても、単一・大角散乱における荷電変換、非弾性エネルギー損失は、理論的には計算が非常に難しく、系統的なデータ収集が強く望まれている。今後、Energy領域を広げ、対象原子も軽原子まで広げて何らかのScaling則を見出したいと考えている。なお、本研究に関連した発表は、国際会議発表2件、国内会議3件、論文2編(Surface Science, Physical Review A)である。
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