中エネルギー領域Heイオン入射、大角・単回散乱における非弾性エネルギー損失及びスペクトル形状のエネルギー及び散乱角依存性を、Si(111)-√<3>×√<3>-Sbを用いて調べた。最表面Sb原子に大角・単回散乱されたHeイオンの非弾性エネルギー損失値は、Schiwietzの理論計算値と一致した。そのスペクトル形状は、内殻電子励起に起因して低エネルギー側にTailをもち、非対称GaussianまたはGaussian-Lorentzian型となる。その形と幅に関して、Universalな関係式を与えることが今後の課題である。 以上の研究に加え、中エネルギーHe及びNeイオン入射での弾性散乱断面積の絶対測定を行った。その結果、軽イオンHeに対しては、ZBL及びHatree-Fock (HF) Modelから求めた遮蔽Coulomb Potential (He^<2+>仮定)による計算値と一致した。しかしながら、重イオンNeがHigh-ZのHfやSb原子に大角散乱される場合、散乱断面積は上記遮蔽Coulomb場(Ne^<10+>仮定)による計算値よりかなり大きくなった。これは、衝突時の分子軌道形成による電子密度分布の変化によって散乱軌道が変化し、結果的に電子の遮蔽効果が減少して、散乱断面積が増大することが分極モデルより定量的に示された。
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