a)電子伝達体の空間配置を求めるための3スピン系ELDOR 本研究では最初これまで距離がわかっていたチロシンZ(Y_Z)とY_D、Q_AとY_D間に加えQ_AとY_Zの距離を導くため3スピン系のパルスELDORを試みた。3スピン系が必ず等しく凍結できるわけではないので、実際のスペクトルは3スピン系に2スピンが混じったものとなり適当な混合比を仮定してsimulationを行い、34Åを導くことができた。この値を確かめるため、いつも安定に存在するY_Dラジカルのない緑藻クラミドモナスの変異種についてQ_A-Y_A対のELDORをも行った。更に電子伝達体全体の3次元配置を求める方法を編み出した。 b)電子伝達体の機能するサイトを決める。 正常な電子伝達が阻害されるとY_Zとは別にクロロフィルがP680^+への供与体となることが知られChl_Zと名づけられていた。この電子供与体が対称なD1とD2の蛋白のいずれに属するかは、遺伝子交換や分光法など試みられてきたが、決定的な結果は得られていなかった。ELDORではY_D-Chl_Zの距離が29.5Åと求められていた。更にY_D-Chlz-Q_Aの3スピン系とY_D-less変異体でのY_Z-Chl_ZなどELDORを試みた結果D2-蛋白に属することが決定された。 c)水分解マンガン酵素の酸化とスピン配置。 水分解系の4個のマンガシクラスターでS_0(最も還元されている)とS_2(2回酸化)酸化状態ではELDORではY_Dからの距離の異なることを示しているが、単純な点磁気双極子の相互作用を仮定するとスピンの重心がS_0からS_2に酸化されると7ÅもY_Dに近づくことになる。現在Bittlと共同でスピン射影を4個のマンガンに割り振りしてsimulationを行っている。
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