研究概要 |
本最終年度の研究では昨年度までの点状相互作用研究成果に立脚して、つぎの3点についての研究の拡張を行った。 (1)点状相互作用のグラフへの拡張を含めたさまざまな拡張 点状相互作用は、本来特異性のある逆冪ポテンシャル等の特異点上にも存在することができる、という事実に着目し、われわれのこれまでのフォーマリズムをそのような場合にも拡張するにはどうすればよいのかを解明することができた。特に多次元への拡張やグラフへの拡張の際に重要な逆二乗ポテンシャルが存在する場合についての研究に重点を当てた。具体的には特異点前後での波動関数およびその微分の接続条件のかわりに、あたれられたポテンシャルでの2種類の発散の性質の異なる基底関数を用意し,これのロンスキアン関数を採用すると、これまでの形式をそのままに維持して理論の拡張が行えることを見つけた。これについては発表論文2番目「Extended...」および5番目の「Spectral...」にて詳説されている。 (2)点状相互作用の輸送現象への応用 点状相互作用という概念を時間領域に拡張して考えると、「時間的デルタ関数」が得られ、これに該当する物理系は「標準写像」として知られるものである。これを時間的な「左右へのゆすぶり」に相当する項をつけ加えて拡張すると、微視的な輸送現象の可解なモデルが得られることが示された。これについては発表論文1「Extended...」にて詳説されている。 (3)点状相互作用にて得られた微分作用素の知見の他分野への応用 一見これまでの本研究の流れとは無関係なロトカ・ヴォルテラ系の力学的安定性の性質についても、本研究で得られた知見が活用できることを発表論文の3番目「Evolutionary...」および4番目「Altruistic...」にて示した。
|