本年度は、プレート運動を伴う2次元マントル大循環モデルを用いたマントル進化の数値シミュレーションを実行した。まず、基準となるケースとして、深さ660kmにおけるポストスピネル転移によるバリアー効果が無視できるくらい弱いとき、放射性元素の壊変により内部熱源の強さが弱まるとともに、マントルの熱・化学的状態やマントル対流の定性的特徴がどのように変化するかを見た。この場合は、マントルは2段階で進化した。第一段階では、プレート運動とそれによる海嶺火山活動以外に、局所的なマントル・オーバーターンにより生じたプルームによるホットスポット火山活動が頻繁に起こり、プレート運動は非定常性の強いものとなった。しかし、第二段階に入ると、このマントル・オーバーターンはやんでしまい、プレート運動はより定常的になった。また、この海嶺やホットスポットにおける火山活動の結果スラブがコア・マントル境界まで沈んでマントル全体を撹拌しているにもかかわらず、第一段階・第二段階を通してマントルは化学的に成層した。さらに、下部マントル深部にはちょうど地震波トモグラフィーで実際の地球で観測されているようなブロードな水平不均質構造が現れた。この第二段階のマントルの状態は現在の地球のマントルの状態を良く再現しており、また、第一段階から第二段階への転移は、太古代・原生代境界に対応すると考えられることを指摘した。さらに、660kmバリアーの強さや、プレートの堅さなど、様々なパラメータを動かして、以上の結果がどの程度普遍性を持つかチェックした。この研究に引き続き、将来の研究への足がかりを得るため、3次元空間でのプレート運動の数値シミュレーションも実行し、プルームにより新たにプレート境界が生成される様子を再現することに成功した。
|