重力観測は他の方法(測地学的・地震学的)とは相補的に地殻変動や物質移動(マグマ上昇・地下水の変動など)を調べる有効な手段である。このときに観測の主役となっているのは絶対重力計であり、基準点を設けることなく重力変動を知ることができる。しかし、従来の絶対重力計はいずれも野外観測機器としては機動性・経済性に欠けている。そこで、われわれは従来の絶対重力計の問題点を検討し、構造や信号取得法を工夫することで大幅に小型化できる見通しを得た。本研究の成果をまとめると以下のとおりとなる。 (1)微小投げ上げ方式の絶対重力計を提案した。この方法で、投げ上げ距離・サンプリング速度と検出重力精度の定式化を行い、テスト鏡の2mm程度の投げ上げで1MHzのサンプリングで干渉縞強度を検出すれば、1μgal相当の重力検出精度が得られることがわかった。 (2)実際の重力観測では地面振動加速度が測定誤差を生じさせる。そこで、参照鏡に制御をかけ、地面振動加速度をその制御信号から検出し、測定値から差し引くことで誤差を低減させる方法を検討した。実際に測定した実験室の地面振動を用いて数値シミュレーションをおこない、やはり1μgal以下の誤差に地面振動の影響を抑えることができることを示した。 (3)以上の原理で測定できるような試作機を製作した。投げ上げ装置の性能評価を行い、テスト鏡の投げ上げ高さに関しては十分な再現性があることを確認した。しかし、テスト鏡にわずかな回転が生じることがわかり、低減させる方法を検討した。
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